防犯対策の基本 ― 鍵をかける、それだけで半分は守れる
少し意外なデータから始めます。
住宅に侵入される手口で、いちばん多いものは何だと思いますか。ピッキングでも、ガラス破りでもありません。「無締り」、つまり鍵のかけ忘れです。全体の約半数(47.8%)を占めます。


泥棒は特殊な技術で入ってくるのではなく、開いているところから入ってくる。この事実を知るだけで、防犯の半分は「今日、0円で」始められることがわかります。
heion-baseではこれまで、地震や停電といった「自然の脅威」への備えを積み上げてきました。この記事から始まる防犯シリーズで向き合うのは、もうひとつの脅威――犯罪という「人の脅威」です。台風のように予報は出ません。けれど、手口にははっきりした傾向があり、対策には根拠のある順番があります。
不安を煽るつもりはありません。データを見て、淡々と手を打つ。いつものやり方で進めます。この記事は、防犯シリーズ全体の入り口(目次)です。
※ 本記事のデータは執筆時点(2026年)の公的統計・調査に基づきます。数値や制度は更新されるため、最新情報は警察庁や各自治体の発表をご確認ください。また、ここで紹介する対策は被害の確率を下げるものであり、安全を100%保証するものではありません。
結論:防犯とは「5分」をつくる作業
先に、このシリーズ全体を貫く結論を書いておきます。
警視庁が元空き巣に行った聞き取り調査によれば、侵入に5分以上かかると、約7割が侵入をあきらめます。
つまり、防犯の目標は「絶対に破られない要塞」をつくることではありません。「この家は面倒だ」と思わせる5分をつくることです。絶対に割れないガラスも、絶対に開かない錠もこの世にありませんが、「時間のかかる家」は今日からつくれます。
泥棒が嫌うものは、突き詰めると4つです。

- 時間:補助錠や防犯フィルムで、侵入に手間取らせる
- 光:センサーライトで、暗がりをなくす
- 音:砂利や警報で、静かに作業させない
- 人の目:カメラや近所付き合いで、「見られている」と思わせる

この4つを少しずつ重ねる。一つひとつは小さくても、重なれば「やめておこう」になります。備蓄を小分けで積み上げたのと、考え方は同じです。
データで見る、今の侵入犯罪
対策の前に、現状を冷静に押さえておきます。
侵入窃盗の件数そのものは、長期的には大きく減っています。ピークだった2002年には全国で33万件を超えていましたが、2024年は約4万3千件。20年あまりで8分の1になりました。まず、この事実は安心材料です。
ただし、内訳を見ると油断はできません。2024年の侵入窃盗のうち約4割(約1万7千件)は住宅で発生しており、1日あたり40件以上のペース。住宅の中では一戸建てが最も狙われています。
そして、近年の質の変化です。SNSで「高額報酬」「即日払い」と実行役を募る、いわゆる闇バイト。匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)による強盗は2021年から2025年にかけて20以上の都道府県で相次ぎ、留守宅だけでなく在宅中の家に押し入るケースも報じられました。政府は2024年末に緊急対策をまとめ、警察も2025年から新しい捜査手法(仮装身分捜査)の運用を始めています。
件数は減った。しかし手口は荒くなった。これが現在地です。「こっそり盗まれる」対策に加えて、「在宅中に来られたら」まで視野に入れる必要があります。
予算別・対策の優先順位
では、何から手をつけるか。私は「かける金額」で三段階に整理するのがいちばん実行しやすいと考えています。


0円:施錠の徹底(最優先)
ゴミ出しでも、近所のコンビニでも、必ず鍵をかける。「すぐ戻るから」が、最多の侵入手口「無締り」の入り口です。窓のクレセント錠も忘れずに。最大の弱点を、コストゼロで塞げます。あわせて、来訪者にすぐドアを開けない習慣も。インターホン越しの確認は、在宅時の守りの第一歩です。
数千円:開口部の補強
次に多い手口がガラス破り(約3割)です。窓に防犯フィルムを貼る、玄関と窓に補助錠を足してワンドア・ツーロックにする。数千円の投資で、「5分」にぐっと近づきます。センサーライトや防犯砂利もこの価格帯から揃います。
数万円〜:設備で底上げ
録画機能のある防犯カメラ、CPマーク付きの建材(侵入に5分以上耐える性能を満たした防犯建物部品の共通マーク)への交換、ホームセキュリティの導入。ここまで来ると「面倒な家」としてはかなりの水準です。ただし順番を間違えないこと。カメラがあっても鍵が開いていれば意味がありません。0円の対策が、すべての土台です。
家を三つの層で点検する
予算の順番とあわせて、家を「外から内へ」三つの層で見ると、抜けに気づきやすくなります。


家の周り(敷地・外構)
下見をさせない層。見通しを確保し、暗がりに光を、通路に音を。泥棒は下見の際、表札やメーターに自分用の印(マーキング)を残すことがあります。見慣れない記号やシールに気づいたら、消しておきましょう。
開口部(玄関・窓)
侵入の最終関門にして最重要の層。施錠・補助錠・防犯フィルムはすべてここの守りです。
在宅時の守り
最後の層。インターホンで確認してから対応する、チェーンをかけたまま話す、夜間は雨戸やシャッターを閉める。「在宅していれば安全」という前提は、今の時代いったん外して考えます。
このシリーズの歩き方(目次)
この記事をハブに、テーマごとに掘り下げていきます。気になるところからどうぞ。
- 近年の闇バイト強盗から家を守る(時事・在宅時の強盗対策)※準備中
- 一人暮らし・女性のための防犯(狙われ方とターゲット別の守り)※準備中
- 特殊詐欺・闇バイトへの対策(お金を奪う「人の脅威」=経済の防衛との橋渡し)※準備中
防犯は、物理だけでは完結しません。パスワードや個人情報を守る「デジタル防衛=守りのIT」(※準備中)は現代のもうひとつの侵入口対策ですし、保険証券や通帳などの「重要書類の一元管理」(※準備中)は、万一の後の立て直しを早めます。災害への備え(備蓄シリーズ)とも、根っこは同じ。自然の脅威にも人の脅威にも、同じ落ち着きで向き合う――それがこのブログの目指すところです。
おわりに
防犯の情報は、不安を煽るものが多すぎます。けれどデータを見れば、やるべきことは驚くほどシンプルでした。鍵をかける。5分を稼ぐ。光と音と人の目を、少しずつ足す。
不安は「わからない」から大きくなり、「対処した」分だけ小さくなります。まずは今夜、家中の鍵を一周確認するところから。
慌てず、淡々と。それが、heion-baseの平穏の守り方です。


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